転職エージェントを利用した求職者の方々の意見の中に「転職エージェントは年収の高い求人ばかり勧めてくる」というものがあります。
この「転職エージェントは年収の高い求人ばかり勧めてくる」というのは間違ってはいないのですが、少し違うと感じる部分もあるので、転職エージェントに10年ほど勤務した経験から、その背景を整理して解説してみたいと思います。
なぜ年収の高い案件を勧めてくるのか?
「転職エージェントは年収の高い求人ばかり勧めてくる」という主張の根拠として挙げられるのが「年収が高いと紹介手数料も高いから。だから年収の高い案件を勧める。」というものです。実際、転職エージェントの収益は、人材を採用してもらった際の成功報酬によって成り立っており、その成功報酬は年収に一定の料率を乗じた金額(一般的には『年収×25~35%』くらい)となります。そのため、エージェントには、高い報酬を得るために、年収の高い案件を積極的に勧めるというインセンティブが働きます。
年収の高い案件を勧める前の段階がある
このように、エージェントには求職者に対して高年収の求人を勧めるインセンティブがあるわけですが、実は、年収の高い案件を受けてもらう前段階となる2つの希望(欲求)があります。
それは、
- 自社で取り扱っている求人案件に応募して欲しい(他のエージェントの求人案件を受けないで欲しい)
- 内定の出そうな求人案件に応募して欲しい
の2つです。
まず、1の「自社で取り扱っている求人案件に応募して欲しい(他のエージェントの求人案件を受けないで欲しい)」についてですが、前述のとおり、転職エージェントのビジネスは成功報酬です。そのため、まず自社で取り扱っている求人案件に応募して内定が出なければ収益につながりません。同時に、他エージェントの案件で転職が決まってしまってもやはり収益につながりません。
このような事情から、「年収の高い案件を受けてもらう」前段階として、まずは「自社で取り扱っている求人案件に応募して欲しい」という希望を強く持っています。
次に、2の「内定の出そうな案件を受けて欲しい」ですが、こちらも前に述べたのと同じ理由で、転職エージェントは成功報酬のビジネスモデルのため、いくらたくさんの求人に応募してもらっても、内定が出て入社してもらわなければやはり収益にはつながりません。そのため、転職エージェントが年収の高い案件に応募してもらいたいのはもちろんですが、それ以前に(仮に年収が低い案件だとしても)「内定が出そうな求人案件に応募して欲しい」という希望があるのです。
まとめますと、転職エージェントは求職者に対して以下の順で応募を希望します。
1.まずは、自社で取り扱っている求人案件になるべくたくさん応募して欲しい(他のエージェントの求人案件は受けないで欲しい)
↓
自社の求人案件に応募してもらえることになったら、、、
↓
2.自社の取り扱い求人案件の中でも内定の出そうな求人案件になるべくたくさん応募して欲しい
↓
内定の出そうな求人案件に応募してくれることになったら、、、
↓
3.内定の出そうな求人案件の中でもなるべく年収の高い求人案件に応募して欲しい
とは言え、内定可能性や年収に関係なく応募を勧めてくるケースもある
少し強引なまとめ方ではありますが、転職エージェントが求人への応募を勧める背景には上記のような階層構造があると言えます。
ただ、転職エージェントの現場では、ひとりの求職者に紹介できる求人が数件しかないことが一般的なため、そういったケースでは、上記のようなロジックで案件を絞り込まず、「ウチで紹介できる案件が少ししかないから、内定可能性や年収などは関係なくできるだけたくさん応募して欲しい」というスタンスになるわけです。(この辺はエージェントのスタンスによるので、営業職の強いエージェントであればやたら応募するように勧めますし、そうでないエージェントであれば「良い案件が出たらご連絡します」となります。)
信頼できるエージェントを見つける、エージェントとうまく付き合う
今回のような内容を読むと転職エージェントを信頼しにくくなるかもしれませんが、必ずしもすべてのエージェントが自社の利益だけを追っているわけではありません。業界には、採用側(企業)と求職者のバランスをうまく保ちながら、転職をコーディネートしてくれるエージェントもいますので、そういったエージェントを見つけることも転職を成功させる秘訣のひとつです。
また、上記のインセンティブ構造を理解しておくことにより、例えば、エージェントに対して「他エージェントの案件より御社の案件を優先しますよ」と言えば、エージェントはより求職者に対して親身になってくれたりもします。エージェントのビジネスを理解することによって、うまく付き合っていくこともできるわけです。
今回、割愛した部分も多々ありますので、転職エージェントに関しては、今後も継続的に解説していきます。