主婦(主夫)の税理士や会計事務所で働く方々の中には、子育て中は短時間しか働けないけど、復帰後には以前のような責任のある仕事がしたいと思っている方、これから産休育休から復帰しようとしているけど、融通が利くのか・仕事と家庭を両立できるのか不安を感じている方もいらっしゃると思います。
今回は、そんな皆さんに最近の会計事務所業界での主婦の働き方についてご紹介できればと思います。
皆さんがこの記事を読んで、自分の力を最大限発揮できる働き方を見つけてもらえたらと思っています。
税理士・会計事務所業界の働き方、今昔
税理士は手に職があるので、女性でも比較的働きやすい業界ということは今も昔も変わりません。
会計事務所業界は、小規模な会計事務所が多いため、産休育休で丸々1人を休ませる余裕はないにしても、出産後も子どもが小さいうちはパートで働かせてもらえるような環境は従来よりありました。実際、会計事務所には、パート勤務で働く主婦や子育て中の女性がたくさんいます。
ところが最近は、従業員が数十人、数百人の大規模な会計事務所が増えてきて、女性や主婦(主夫)税理士の働き方が変化してきています。
例えば、大規模な会計事務所が増えたことで、産休や育休をとりやすい会計事務所も増えてきました。また、従来は、正社員かパートかの二者択一だった働き方が、正社員のままでの時短勤務や業務委託など、選択肢が増えてきています。税理士業界にも働き方改革が徐々に起き始めています。
時代は変わり働き方も変わってきた。変化の要因3つ
会計事務所での女性の働き方が変化している背景としては、3つ要因があります。クラウドサービスなどIT環境が整備されてきたこと、働き方改革の影響、そして会計事務所業界の人材不足です。
【会計事務所業界での働き方が変化している3つの理由】
- クラウドサービスなどIT環境の整備
- 働き方改革の影響
- 会計事務所業界の人材不足
1.クラウドサービスやIT環境が整備されたことで、働く場所が選べるようになった
ひとつめはクラウドサービスなどインターネット関連の技術やサービスが進歩して、遠隔で仕事ができるようになってきたことがあげられます。
これまでは、資料のやりとりは紙で行う必要がありましたが、最近では、freeeやMFクラウドのようなクラウド会計ソフトであったり、DropboxやGoogleDriveなどインターネット上でファイルをやりとりできるクラウドサービスを安価に活用することができます。
そのため、小規模な会計事務所でも、顧問先や社外のスタッフと簡単にデータのやりとりができるようになりました。
このようにIT環境の整備が進んだことで、自宅や自分の事務所などで、顧問先は会社に行かなくてもデータを共有して働けるようになりました。
2.働き方改革による求人の創出
世間では働き方改革が声高に進められていますが、会計事務所業界にもその影響は出ています。
特にコンサルティングを中心にしている大手の会計事務所では、コンサルタントの残業を減らすための動きがあります。
例えば、コンサルティングのための基礎資料の作成、事務作業や簡単なリサーチは、アシスタントが作業を行うようになってきています。
「アシスタント」と言っても、コンサルタントのサポートをするには一定の専門的な知識が必要ですので、そういったアシスタント職に主婦税理士や、能力があるけれども働ける時間が短い人を活用しようという動きが出てきています。
3.人材不足は税理士業界にも広まっている
3つ目は、会計事務所業界の人材不足です。働き方の変化には、この影響がもっとも大きいです。
近年は好景気で人材の採用が難しくなってきており、正社員でフルタイムで働ける税理士を募集をしても、応募は減ってきています。特に東京の人材不足は深刻な状況です。
理由としては、受験生が減っている、また、景気がよいので求人を出す会計事務所が多かったり、会計事務所以外に一般企業でも会計系人材を募集していたりしていることで、採用競争が激化しています。
このような理由から、少しでも人材を採用しやすくするために、女性や主婦など時間に制約がある人も含めて、働き方の幅を広げて人材を募集する事務所が増えてきています。
主婦税理士が選べる3つの働き方
さて、そんな状況を踏まえて、女性や主婦の税理士の人たちにはどのような選択肢があるのでしょうか?
パート以外に以下の3つの働き方が挙げられます。
- 正社員での残業なし勤務
- 正社員または契約社員での時短勤務
- 業務委託でプチ独立・開業
1.正社員で残業なし勤務
これまでは、残業をせずに働きたい場合、残業の少ない会計事務所を見つけて働く、もしくはパートで働くことが一般的でした。
しかし、一部の大手会計事務所などでは、「残業をしない正社員」の採用を行っているところも出始めています。
この場合、基本的には普通の正社員と同じ待遇で残業をせずに働くことができます。
違いがあるとすれば、残業をしないので残業代分だけ年収が下がる点です。
また、会計事務所によっては、残業しなくて済む仕事ということで、事務作業などそれほど高度ではない仕事の担当になる場合があります。
そういった場合には、年収が低めになることもありますが、税務申告書を1人で作れる税理士有資格者であれば、年収500万円以上、科目合格者でも300~400万円程度の年収を実現できるケースもあります。
2.正社員または契約社員での時短勤務
残業がないだけでなく、さらに、定時より短い時間で働きたい人のために、「時短勤務制度」を採用する会計事務所も出始めています。時短勤務であってもパートではなく、正社員あるいは契約社員で採用されることが特徴です。
勤務時間に関しては、個々の会計事務所によりますが、正社員雇用で10時~16時など短い時間で勤務する制度があるところもあれば、契約社員雇用にして希望の勤務時間に融通をきかせてくれるところもあります。
契約社員ですと、契約期間の満了の際に雇契約が更新されないなど雇用が不安定に見えるかもしれませんが、時短勤務の場合は、短い時間でも働けるようにすることを目的に契約社員という制度を利用していることが多いため、契約社員である点はあまりネガティブに捉えすぎなくても良いでしょう。
他にも、時短と組み合わせて、業務の一部を在宅勤務でできるような会計事務所も出てきています。
ただ報酬となると、定時よりも勤務時間が短いので、高い給与は望めないでしょう。一方で、勤務時間が柔軟なので、家庭と両立できるメリットは大きいといえます。
3.業務委託でプチ独立・開業
3つ目は業務委託のパターンです。
自宅を事務所に税理士事務所を開業したり、青色事業者で独立した後、会計事務所と業務委託契約を結んで、税務や決算・記帳業務を受託するケースです。
条件、労働時間、勤務場所、報酬を契約で決めることができるので、3つのパターンの中で一番自由度が高い働き方です。
デメリットとしては、正社員ではないので福利厚生がないことや、契約が切れる可能性があるという点です。
一方のメリットとしては、税理士登録をしている人なら、業務委託の仕事をこなしながら、自分の顧問契約も増やしていけるところです。
お客さんが増えて軌道に乗ってきたら、業務委託を減らすという人もいます。もちろんワークライフバランスを考えて、業務委託だけでプチ独立することも可能です。
こういった雇用形態の求人は多いの?求められるスキルは?
求人はまだ少なめだが、候補者も少なく需給バランスは良好
こういった新しい働き方は、業界でも最先端の話なので、やはり東京が中心になります。そして、こういった求人は増えてはいるものの、非常に多いかというと、当然従来の求人のほうがまだ多い状況です。
ただ、税理士の資格があって、かつ、まだ小学生以下など小さい子どもがいる人も、それほど多くはいません。
そのため、求人は多くない反面、応募する人も少ないので、需給バランス的には競争率はそれほど高くないでしょう。
目安は会計事務所経験2~3年程度から、税理士資格を取得しているとベスト
採用で求められる経験年数は、会計事務所の勤務経験が3年程度あれば概ね対象になります。また税理士資格を持っている人がベストですが、2、3科目以上合格している人も対象になります。
求められるスキルとしては、税務申告書が一人で完成させられるとベストです。
税理士科目は、法人税や消費税合格者などが好まれますが、資産税も募集がありますので、相続税合格者にもニーズがあります。仮に1人で税務申告書が作れなくても、月次決算レベルのスキルや税務申告の基礎資料を作れるスキルがあれば対象になります。
こういった採用基準は、事務所によってまだまだ差はあり、業界のスタンダードは確立されていませんが、女性税理士を広く受け入れる風潮になってきています。
3年くらい完全な専業主婦をしていて、復帰を諦めている人もいるかもしれませが、そういう人も復帰するチャンスが増えています。
自分に合った職場選びのポイント
東京の場合、従業員が100人以上の大手税理士法人などでは、こういった人材を複数名募集しているケースがあります。
20人未満の会計事務所でも募集はしていますが、小さい事務所だと採用枠は1~2名と少ない傾向にあります。
大きい会計事務所で働くことのメリットは、同じようなポジションの人が複数名いるので、理解してもらいやすいということです。また、大きい会計事務所の方が高度な業務をやっている可能性があるので、そういった業務にチャレンジしてみたい人に向いています。
小さい事務所の場合は、所長次第というところがあります。所長との相性もありますし、所長の考えが柔軟なら大手で働くよりも自由に働ける可能性があります。また、仕事内容は、中小企業を担当することが多くなるため、時短勤務でも全部一人で担当できるなど、やりがいがあるかもしれません。
このように、今までパート勤務だった方や時間的制約から復帰を諦めていた方にも、女性にとって魅力的な働き方ができる求人が出てきています。これを機会に、ぜひ活躍してもらえたらなと思っています。またこのような女性の働き方改革が業界の人気回復につながることを祈念しています。
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